愛を乞う

 

 

ファントム閉幕!おめでとうございました!

千秋楽前からちまちま書いていたのになかなかまとまらず、時差たっぷりで更新してしまった…しかも結局まとまらなくて5000字超えた。推敲能力が無

愛とは、信仰心とは、なんだか考えさせられる作品でした。

エリックとクリスティーヌのお着替えもいっぱいあって、舞台の端から端まで愛でいっぱいで、正直すべてを見きれなかったために後悔が残りました。Blu-rayを見て初めて知ったことばかりだった、私は何を見ていたのか。

そして、音楽演出や舞台転換がわりと好きでした。映像演出については以前から苦手で、映像の占める比重が大きければ大きいほど無理だから、やっぱり絶妙にダサくて苦手だったなあ…特にmy mother bore me銀橋渡りの背景映像。もはや一周回って面白い。舞台作品に映像は必要なのかしら。

 

以下、公演中に書き留めたメモと円盤映像を元にした私の解釈による感想です。全ての文末に ※個人の感想です の注釈を付けたい。

 

 

エリック

どうしてこの世に生まれてきたのだろう、と歌っているわりに、エリックは生まれてから死ぬまで、ずっと愛されている。

彼は、「オペラ座のファントム」として権力を握っていた。あの時代における社交場オペラ座の価値は相当なはず(貴族中心から労働者階級へ移り変わることにはなったけど)だけど、キャリエールと共謀して取り仕切っていたようなものだし。パパが支配人で良かったね…

歌手として表舞台に立ったり、他の人のように等しく愛されること以外は彼にとって生きるに値しない絶望なのかもしれないけれど、あれだけ愛されておいて、よくよく考えたらエリックってそんなに不幸せなのか?って思ったり…まあこれは私の幸せの価値観による感覚や、外から彼の人生を観客として見るからこその視点なのかも。

従者に対して「僕がしてやらなきゃ」みたいなことを言ったり、クリスティーヌに対して「君の為に生きる」「君を守る」と歌ったり、基本的に自己肯定感が強い。愛を受けて育たないと、自尊心も育たない。

「僕の叫びを聞いてくれ」、彼は自分を暖かく迎えてくれる場所は無いと悟り、諦めながらも求めずにはいられなかった。なぜなら愛のあたたかさを知ってしまっているから。偶然が重なり出会えたのがたまたまクリスティーヌだっただけで、母のような愛を与えてくれる者なら他の登場人物の誰でも良かったのだと思う。運命の二人というよりも、偶然出会った二人という表現が私にはしっくりくるような気がする。

キャリエールだって始めこそ距離はあったもののエリックを見捨てることはせず、父親として、出来ることは全てしてやっていたと思う。それはベラドーヴァとエリックへの償いだったのかもしれないけど、ラストの二人の関係性は確かに愛だった。過剰に与えすぎたせいでエリックは欲望への歯止めが効かなくなったけど…与えすぎて腐らせてしまうのは愛と呼ぶのにふさわしいのか?

そしてキャリエールはいつか来る終わり(破滅?)を予感していて、終わらせるのは自らの手でなくてはいけないと分かっていたらしい。死によって完成される美。エリックにとって唯一の救いが、クリスティーヌではなく、キャリエールで良かった。

人々が噂し恐れている「怪人」は、彼の愛する父と、愛する女の子と、従者、その他大勢の人に看取られてこの世を去り、ようやくオペラ座の真実は明かされた。怪人も所詮はただの人間で、誰かの愛しい子であったのだ。

 

キャリエール

キャリエール、というよりも、彩風さんの演じるキャリエールが、めちゃくちゃ好きでした。特にビストロ。クリスティーヌの歌を初めて聞いた時の天を仰ぎながら喜びを噛みしめる顔が、エリックのそれと同じなんですよね。そっくり。あとパリメロでクリスティーヌとエリックがデュエットしてたかと思いきや、伯爵とキャリエールがデュエットするのが狂おしいほど好き。めちゃくちゃ面白い。ビストロのキャリエールアングルが欲しい〜!!!

その後クリスティーヌに「貴女の声を聞いてある人のことを思い出した」って言うの、デリカシーないおじさんで好き。褒めてるつもりなのか?クリスティーヌがそういうの地雷じゃなくて助かったね

あと、事あるごとに「エリック…!」と声に出しちゃうキャリエールとても可愛い。よく最後までバレませんでしたね。エリックがジェラルドとファーストネームで呼ぶのが好きだった。二人しか知らない、二人にしかわからない、二人だけの世界。

彼は敬虔なクリスチャンで、故にこの悲劇が起きた。信仰心の無い私には分からない世界だけど。彼こそエリックが怪人たる元凶なのである。

ベラドーヴァと出会ってから子供ができるまでかなり時間があるように思えるのだけど(彼女と出会ったのが18歳で、すぐに惹かれ合って、エリックが生まれるのが27歳くらい?)、既婚という真実を打ち明ける誠実さは、臆病さ故の保身に負けてしまったのか。

彼がとんだ大悪党であったならば憎めたものの、それ以外では彼は愛情深く有能で人望の厚い男だ。ベラドーヴァと出会う前の18歳の時点で既に愛のない結婚をして、お別れをしていたと考えると、初恋の彼女に事実を言い出せない気持ちも理解できなくもない。というか、ただ純粋に惹かれ合って目の前の彼女だけを追いかけていたとしたら、今のことしか考えられないよなあ、若いし。情状酌量

まあその隠していた期間が長くない?って話だけど、彼にとって手放せる相手ではなく、信仰心と結びつけるとまたややこしくなってしまうのね。ベラドーヴァのこと、子供のこと、彼のご家族は認知していたのだろうか。そんなことはストーリーには関係ないのだけれど。

当時オペラ座支配人見習いだったということは、学ぶのに充分な知性や家柄があったはず。それなのに彼は眉尻が下がったような優しい表情で彼女に、どうして僕を愛してくれるんだ?と聞く。どこか自信がないような、後ろめたいような、彼の優しさが表れる。怖かったんだろう、臆病だから。そしてベラドーヴァは歌ってしまった、愛の為に。暖かな秋の日に小川のほとりで聴いた奇跡のような歌声を、彼もまた、クリスティーヌに重ね合わせていた。

いくら望まれたといって愛する息子を殺すなんて普通はしない。けど彼はそれをした。愛する神を裏切ってまでも、彼の意思で。すべては愛の力。28年という長い歳月が育てた彼のエリックへの愛がとても美しかった。死が愛を分かつのではなく、死が二人を結んだ。

 

ベラドーヴァ

愛は祈りだ。彼女は祈った。エリックは「人は愛や喜びのために歌うのであって、何かを手に入れるために歌ってはいけない」と言っていた。これはおそらく母の受け売りなのだろうと思いながら聞いていた。彼女が歌ったのは、支配人見習いである彼に自らの歌声をアピールするためではなく、愛の為だった。その後歌手としてパリの花形になったのはおそらくキャリエールの力なので、まあここは若干腑に落ちない。彼女のキャリエールへの愛が、彼の中で商売に直結?変換?されてしまったようでなんかもやっとしてしまった…それこそ自分の歌声を売り込むために歌ったと勘違いする人が現れても不自然ではない。キャリエールと解釈違いが起きた…

ベラドーヴァが笑顔で歌い上げる、私の歌声が生んだ天使、というのがあまりにも切ない。母親の無償の愛と父親の感情が対照的なようで悲しくなった。キャリエール…お前という奴は…エリックストーリーもキャリエールによる回想だから絶対彼の都合良いように解釈されてるでしょ、ベラドーヴァ、真実を教えて〜〜!

私はファントムのキャラクターの中でベラドーヴァがいちばんすき。幸せそうなのにどこかからっぽなようで儚く、それがとても美しい。母は強く美しいな

 

クリスティー

クリスティーヌについて、私にとって最も感情移入のできない人物だった。キャラクターの書き込みの少なさが原因だったように思う。農場育ちの少女が、突然パリの街に曲を売りに現れる。クリスティーヌはパリからどのくらい離れた場所に生まれ、どのように育ったのか。

夜のために着替えのナンバーでは、下手からちょこちょこと現れて銀橋を渡り、オペラ座を見つけたときのキラキラした目をするクリスティーヌがとても愛らしい。真彩希帆さ〜ん!!最高。ここもっと注目すれば良かったな〜後ろばっかり見てました。映像入ってて良かった。

 

シャンドン伯爵

クリスティーヌを探すときに歌う曲の的外れ感というか、自己満感がすごい。きっとクリスティーヌは僕を求めて怯えているのだと、自信に溢れた伯爵が可哀想で仕方ない。愛おしい彼女はあの悍ましい怪人に愛情を感じているというのに。明るく世界で生きる彼には、当然闇は見えていないのだ。あんなに華やかで麗しく人々の羨望や尊敬の対象である彼が、空回って見える。まあそう感じるのは全てを知る観客のみですが。全てを手に入れられる彼だからこそ切なく感じた。

そしてわたしはAパターンの彩凪さんフィリップが好き。他人を小馬鹿にしたような嫌味な感じや野心丸出しな感じも、ソレリを無下にしている感じもなく、お上品で紳士的。人との距離感が絶妙。彩凪さんは両手に女性を抱える役が似合うね

 

アラン・ショレ

タイミング的にAパターン(朝美さんver.)ばかり見ていたので、A寄りのショレ像です。タイターニアでクリスティーヌが歌えなくなった理由が、自分の愛する妻が毒を盛ったからだと、もし気付いていたらどうしてたんだろう。きっと可愛い子を苛めていることには気づいていたんだろうなあ。ビジネス?愛?いくら溺愛しているといったって、ショレの倫理観とそれに基づく行動に興味がありました。まあ当然描かれませんが。彼はカルロッタのどこに愛情を感じているのだろうね

全然関係ないけどフーガでちゃっかり踊り出すショレめっちゃ可愛くて好き 

 

 

従者

そしてファントムを語る上で欠かせないのが従者。ファントム然り、確かに人間として存在しているはずなのに、なんだかそうでないような、不思議な存在。でもお衣装がお揃いなのが可愛いし、ビストロではちゃんと正装なので可愛い。大事にされてる。彼らが命を懸けてエリックを守ろうとする姿が今作品上最も泣けるポイントでした。だって元々戦闘能力に長けていたような子たちではなさそうだし…エリックを愛しているからこその捨て身の愛を感じて泣けた。あとはフーガであゆみさんとひーこさんがセンターでシンメになるのがはちゃめちゃに好きだった。かっこいい!!!!

エリックが亡くなり、彼らはどうなるのか。おそらく今までのようにキャリエールがどうにかしてくれると思うが、エリックの為に生きた彼らが、主人である彼を失ったらもう従者ではなくなる。エリックがもしこの先も生きていたとしたら従者が追加されることはあったのだろうか。浮浪者、どうやって拾ってきてたんだろうね。見境なく連れてきてたわけでないだろうし。

エリックやクリスティーヌの衣装を作ったり、エリックが僕の領地と呼ぶあれを作ったのもきっと従者ですよね?エリックが鳥だと思っているのはあがたくんなの?笑 あれはなにを表しているのだろうか?従者たちは健気で可愛いね。彼らもまた愛に生きる幸せな浮浪者、なのかな〜

クリスティーヌに逃げられて森を作っていた布が落ちて、この森もクリスティーヌの愛も全て幻だったのかと気付いたかのようなエリックの表情が切なくて好きでした。

 

 

個人的にすきだったあれこれ

・団員のバレリーナ

すごい!かわいい!華やか!すき……ののかひまりちゃんのフェッテめっちゃ綺麗〜!天才。

・代役たっちージャンクロード

「こちらへおいで」の言い方がめちゃくちゃ愛に溢れていて好き!!!!となりました。ジャンクローーーード!!!!毎回たっちーばっかり見てて真ん中見逃す、あるある。ジャンクロード本役の奏乃副組長は猫の恩返しの猫王みたいなビジュアルで好き

・おーじくん警官

キャピキャピ生き生きしててどんどんオタク出してきてて笑いました。凸るし結果構ってもらってるし同担だったら嫌なタイプのオタクだった…リシャール様のウインクおこぼれ貰えたので許します。

・コロス

推しコロスは陽向くん…顔を隠していても明らかにひとりヤバイ奴がいて絶対に目を奪われてしまった。

・鳳華はるなちゃん

出会えてよかった〜〜!!!!ジジくんのダンスってなんであんなにぐっと来るのだろうか。ダンスだけじゃない。役の性格もあるだろうけど一人明らかに視覚的な情報量が多い。精神不安定な従者の色んな表情が見られて、ガンッガンに揺さぶられた。だって毎回第1幕の序で号泣…従者でいてくれてありがとうございました…次回から注目する人が増えた。最高

・天才のフィナーレ

まずギラギラスパンコールの眩しすぎる彩凪さんが現れた時点で最高。襟足ないし鮮やかなルージュがめちゃくちゃ艶っぽくてめちゃくちゃかっこいい。最高。

男役群舞。かずみぼーい先生は天才。大階段でキザりまくる下級生が最高。

パリメロ歌い継ぎ中詰(?)、大階段に娘役がずらっと並んでの美しいスカートさばき…最高。

クリスティーa.k.a.彩風さん銀橋ソロ、本編でヒゲ付けてたせいでヒゲなくなっても若干鼻の下伸び気味なのマジで愛おしい、最高。

ショレ朝美さんの階段降りなんかめちゃくちゃ良くて感動しちゃった。パレードの歌割りも役替わりなのとても良い。最高。

良い舞台を見せてもらったのに返せるものが何も無いな

 

このエントリを書くにあたって毎日のように映像を見ているけれど円盤はムラ収録だから東京の記憶が上書きされそうで怖い。

心残りは従者茶に参加しなかったことです。

でも珍しく劇場でお友達に会ったりしてとっても楽しかった。ハッピーな出会いがいっぱいあって、しあわせだった!

総括すると、かわいい衣装がたくさんで、下級生がかわいくて、主演の歌が上手で、好きな女の子が最高で、楽しかったです。

長々とお付き合いありがとうございました。未来の自分が見てウワ…ってなって消すのが目に見えます。